徳島大学大学院医歯薬学研究部 泌尿器科学分野

  • TOP
  • 一般の方へ
  • 医療従事者の方へ
  • 教室案内
  • 入局希望の方へ
  • リンク
  • お問い合わせ
一般の方へ

泌尿器科の病気、治療について

はじめに

 ヨード125(I-125)の永久留置による前立腺癌治療(以下、小線源療法)は前立腺癌に対する放射線治療として、アメリカでは30年以上前より広く行われており、一般的な治療法として既に確立されています。小線源療法とは小さな放射性物質を前立腺に挿入して行う放射線治療です。

 この治療は限局性の前立腺癌においてのみ施行可能です。比較的侵襲が少なく、治療効果は前立腺全摘手術とほぼ同等で、安全で有効な治療法であることはアメリカの多くの症例の検討で立証されています。

 日本では2003年3月にヨード125線源の永久留置が医療法上認可され、2003年7月からこの治療が施行可能になりました。当院では2004年7月から小線源治療を導入し、2015年6月現在、約650例の治療実績があります。原則的に低リスク群では小線源療法単独で、高リスク群ではホルモン療法と外照射療法の併用で優れた治療成績を得ています。


1.小線源療法の特徴

1)安定した照射野が得られる

 前立腺は腸管の動きや膀胱内の尿量によって位置が変化しますが、小線源療法では、前立腺内に線源を留置するため、位置の変化による影響を受けずに確実に前立腺内に照射が行われます。

2)放射線障害がおこりにくい(副作用が少ない)

 小線源療法では、前立腺周囲(特に直腸)への照射量は少なく抑えられます。そのため皮膚への影響はほとんどなく、直腸や膀胱での放射線障害の起こる可能性も外照射より低くなることが利点です。

3)尿失禁が少なく性機能が維持されやすい

 小線源療法では、治療直後の尿失禁はほとんどなく、その頻度は長期間の経過観察でまれに生じる程度です。
 性機能に関しては、5年後に性機能が維持される率は7-8割と報告されています。(一般的に、ホルモン療法施行時には性機能はほとんどの場合失われ、前立腺全摘手術では神経温存手術を試みても性機能が保たれる率は3-4割程度、放射線外照射でも5割程度といわれています。)

4)入院期間・治療期間が短い

 当院では3泊4日の入院で小線源療法を行っています。前立腺全摘手術では約10-14日、外照射の場合は、7-8週間の連日の通院治療が必要です。

2.小線源療法の欠点

1)治療効果の限界

 アメリカ小線源療法学会は、低リスク群(PSA 10ng/mL未満、グリソンスコア―6未満、病期T2aまで)は小線源療法単独、高リスク群(PSA 20ng/mL以上、グリソンスコア―8以上、病期T2c)では外照射の併用を推奨しています。放射線治療では死滅しない癌細胞がある可能性があり、小線源療法による治癒率は手術を上回るものではありません。
 小線源療法では、精嚢(せいのう:精子をためるふくろ)への広い範囲の浸潤や、リンパ節転移を有する症例には治療効果が不十分となることもあります。また、高リスク群では治療効果がやや低下することが知られています。

2)放射線障害

 外照射に比べ放射線障害は生じにくいものの、全く影響がないわけではありません。直腸では治療後1年以降に粘膜の糜爛(びらん)、出血を生じ、ひどい場合には潰瘍が形成されることがあります。海外では人工肛門を造設した例も稀に報告されています。膀胱では粘膜に炎症を起こし、膀胱炎のような症状を呈することがあります。尿道の炎症が強い場合には、血尿、排尿時通、尿道狭窄が起こることがあります。

3)治療時の身体への負担

 身体への負担は少ない治療とはいえ、麻酔や線源挿入時の針の刺入による侵襲は避けられません。危険は非常に少ないものですが100%安全とは言いきれません。

3.小線源療法の適応

1)前立腺に限局した浸潤・転移のない症例にのみ可能です

 癌が前立腺の周囲までおよんでいた場合(被膜外浸潤や精嚢浸潤)は十分な治療効果が期待できません。また骨やリンパ節などの他臓器転移を認める場合は治療の対象になりません。前立腺の中だけにとどまっている癌(臨床病期B(T2)まで)がこの治療の対象になります。

2)再発例は適応になりません

 前立腺全摘手術後の再発例や、放射線治療後の再発例ではこの治療は施行できません。ホルモン治療中にPSAが上昇してきた症例もこの治療は無効です。

3)その他、治療ができない場合

  •  ・過去に前立腺の手術を行っている場合。
  •  ・前立腺が極端に大きい場合。ただし、ホルモン治療で40cc程度まで縮小した場合
  •   は可能です。
  •  ・下部尿路症状のひどい場合(術後、尿路閉塞をきたす可能性があります)。
  •  ・下肢の開脚や挙上などの体位がとれない場合。
  •  ・骨盤部への放射線治療の既往がある場合。
  •  ・前立腺結石が著しく、線源の挿入が困難と判断された場合。
  •  ・前立腺炎
  •  ・合併症があり治療や麻酔に伴う危険が高いと判断された場合。
  •  ・アスピリンやワーファリンなど出血傾向をまねく薬剤(以下、抗凝固薬)を使用
  •   していて、一定の期間その薬剤を中止できない場合。
  •  ・その他、当院において本治療の適応でないと判断された場合。

4.治療までの流れ

1)初診から治療の決定まで

  他施設での前立腺生検で癌の診断がついた方は初診時に下記のデータ(可能なら紹介状)をお持ち下さい。データをもとに治療の可否を検討します。治療可能な場合、小線源療法単独かホルモン治療や外照射の併用が望ましいかを決定します。

  •  ・生検時のPSA値
  •  ・臨床病期
  •  ・組織のグリソンスコア
  •  ・現在までの治療内容
  •  ・既往症
  •  ・現在服用中の薬剤のリスト、または薬剤手帳(抗凝固薬の有無を確認、
  •   薬剤により一定期間の休薬が必要です)
  •  ・臨床病期診断で用いた画像(CT・骨シンチなど)

2)治療前のプランニング(照射計画)

 治療の3~4週前に外来でプランニング(照射計画)を行います。治療時と同じ体位をとり、経直腸エコーで前立腺の形態を三次元的に解析して、線源の配置および使用線源数を決定します。
 同時に術前一般検査として、胸部X線写真、心電図、一般血液検査、出血時間の検査を行います。

3)入院

 入院は3泊4日の予定です。入院時に、中止が必要な抗凝固薬を継続内服していた場合、治療延期で一旦退院となります。

5.治療の実際

1)治療前に行うこと

・前日に陰部の切毛、下剤の服用(夜)
・当日に浣腸(午前中)、午前中より絶食(水分は朝まで可)

2)治療時

  •  ・麻酔は基本的に腰椎麻酔(眠くなる薬剤を点滴することもあります)
  •  ・尿道カテーテルを挿入
  •  ・肛門からエコーを挿入し、エコーを見ながら会陰部からアプリケーター針とよば
  •   れる針を20本ほど挿入し、線源を計50~100個留置します。
  •  ・治療時間:約1.5~2時間
  •  ・治療終了後1時間で水分のみ摂取可能

3)翌日以降(問題なければ翌々日に退院)

・食事開始、尿道カテーテル抜去
・CT等の検査

4)退院後

  •  ・退院1ヵ月後に泌尿器科外来および放射線科外来を受診していただき、PSAの
  •   採血とCT検査を行います。

6.治療の合併症

  •  ・尿閉(尿がつまる):約1%程度に認められます。特に治療前の排尿状態が悪い
  •   場合は注意が必要です。
  •  ・排尿困難:頻繁に認められる症状で、治療後早期から出現します。前立腺
  •   肥大症の治療薬(尿道での尿の抵抗を抑える薬)を内服していただきます。
  •  ・尿失禁:約0.2%の頻度と報告されています。尿路変向を必要とする可能性が
  •   あります。
  •  ・直腸出血、潰瘍:術後6-18ヶ月で出現することが多く、稀に人工肛門造設の
  •   可能性もあります。
  •  ・性機能障害:約4-21%の頻度で認めますが、一般的に他の治療より優れて
  •   います。
  •  ・麻酔による影響(呼吸不全、血圧の変動による心筋梗塞や脳出血)。
  •  ・抗凝固薬中止による血栓形成(心筋梗塞や脳梗塞、下肢静脈血栓とそれに
  •   伴う肺塞栓など)。
  •  ・その他、血尿、血精液症、頻尿、尿意切迫、尿道狭窄、尿路感染、会陰部
  •   痛の可能性があります。
  •  ・まれに線源が血流にのって肺などに移動することがありますが、特に問題は
  •   ありません。

7.術後の注意事項

1)

 留置した線源は放射線を出しますが、周囲の方に与える放射線量は、人が自然界より受けている放射線量よりも低いです。しかし、小さいお子様を長時間ひざに抱いたり、妊婦と長時間接触したりすることは避けて下さい。同室での就寝や団欒(だんらん)は問題ありません。術後60日で放射能は半減し、1年たてば周囲への影響を気にする必要はなくなります。

2)

 ごく稀に尿に線源が排出されることがあります。1個の線源から出る放射線は微量で問題を生じません。線源を拾えるようならビンなどに回収し、お子様の手の届かないところに置いたうえで、あわてずに担当医にご相談下さい。

3)

 性交は術後4週間以降で可能です。ただし、精液中に線源がでてくる可能性があるため、術後1年間はコンドームを使用してください。

4)

 治療後1年間は「治療カード」を携帯して下さい。1年以内に手術を行う場合には、手術担当医師から当院担当医に連絡するようお願いして下さい。また、治療後1年以内に死亡された場合には、前立腺を摘出する必要がありますので、家族の方は担当医に必ずご連絡下さい。

8.費用

 治療費は線源代を含めすべて保険の適応になりますが、個室料金は自費になります(治療当日は必ず個室を使用する必要があります)。

 当院で最低2年以上経過観察した431例の治療成績を示します。再発はPSAの最低値から2.0ng/mL上昇と定義しています。


徳島大学大学院 医歯薬学研究部 泌尿器科学分野

  • 〒770-8503
  • 徳島県徳島市蔵本町3丁目18-15
  • 医局連絡先
  • TEL:088-633-7159 FAX:088-633-7160
  • E-mail:takahashi.masayuki@tokushima-u.ac.jp
  • 外来連絡先
  • TEL:088-633-7157
  • FAX:088-633-7487

© 2012-2018 Tokushima University Graduate school