徳島大学大学院医歯薬学研究部 泌尿器科学分野

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泌尿器科の病気、治療について

ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術について

 ロボットといっても機械が勝手に動くのではなく、医師が操作ボックス(コンソールボックス)の中に入ります。そして、患者さんの体内に差し込んだ鉗子やメスなど手術器具を、ロボットアームを用いて操作することにより手術をすすめます。これにより、

 ①3次元の立体的な画像のもとで手術操作ができる

 ②拡大された視野のもとで手術操作ができる

 ③ロボットアームの動きは医師の関節の動きを完全に反映できる

 という3つの理由から、極めて正確で安全な手術操作が可能となります。すでにアメリカでは前立腺全摘除術の90%以上でロボットが用いられているといわれており、我が国ではロボット支援下前立腺全摘除術の保険収載が平成24年度4月に、一定の施設基準をクリアしている施設で認められました。

 徳島大学では平成23年10月から前立腺癌に対するロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術を開始し、50例以上に施行し、いずれも良好な成績を得ております。ロボット手術支援腹腔鏡下根治的前立腺摘除術は、腹腔鏡下根治的前立腺摘除術をロボット支援下に行うものですが、従来の腹腔鏡下手術に比べてより繊細で、正確な手術を行うことができ、根治性、尿禁制(尿失禁がない状態)を含む機能温存においてより優れていると考えられています。

 腹腔鏡手術は一般に難易度が高い術式ですので、現在認定施設、認定医師の常勤する施設で行われるものですが、認定制度そのものが法的拘束力を持つものではないため、認定がなくとも手術を行うことは可能です。しかし、ある程度の経験がないと、手術解剖の理解、危険回避など瞬時の判断ができない場合があります。当院泌尿器科では腹腔鏡手術認定医師が8名常駐しており、そのうち6名の医師がロボット手術の技術認定を受け手術操作を担当します。また技術認定医が助手を担当し、前立腺腹腔鏡手術の経験を生かして新世代のロボット手術の利点を生かした手術を心がけています。当然少ないですが一定の確率で術式変更(ロボット支援⇒通常腹腔鏡、ロボット支援⇒開腹手術)の可能性があります。また、内視鏡操作では視野が不良である、気腹(炭酸ガスの使用)や手術の姿勢(頭 を若干下げて手術を行う)が身体に影響して手術遂行が難しくなるなどの場合は開腹手術へ変更します。

1. 手術の方法

【手術方法】

1) ロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術とは

・限局性前立腺がんに対する手術です。前立腺と精嚢の摘除、尿道と膀胱を吻合するもので、早期の前立腺がんに対する有効性が確立された治療方法の1つです。開腹手術(恥骨後式前立腺全摘除術)に比して、傷が小さく痛みが軽度で、手術後の回復が早い、手術中の出血量が少ないなどの利点があります。がんの治療実績は従来の手術と同等です。

・術後の回復が早い:大多数の人が手術翌日に自力で歩くことができます。また、手術翌日に食事や流動物をとることができます。

・出血量が少ない:腹腔鏡手術により前立腺手術の難点である出血量について改善が得られることが知られています。この手術法では他人の血液を必要とする輸血の確率は5%未満とされています。

・症例によっては前立腺周囲に走行している神経血管束(男性機能や尿道括約筋機能に関連)を温存することにより、術後の尿失禁や男性機能の保持・回復が早い傾向があります。海外の大規模な手術成績の比較を表に示しますが、切除断端癌陽性率(低い方が癌を残さず取りきれたということを意味します)、出血量、3ヶ月・6ヶ月の尿禁制率(尿失禁がない状態)、勃起機能(神経温存を行った場合)、いずれもロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術が、開創手術、腹腔鏡下手術に比べて優れていることが示されています。ただし、症例選択の違いで断端陽性率は変わってきます。より進行した癌を多く治療している施設ではこの数値が当然高くなってきますので、技術的な優劣を表す数値ではありません。勃起機能については機能温存を意図して手術を行った場合での成績ですので、根治を優先して温存手術を行わなかった場合はこの値よりも機能温存率は低下します。

ただし、「腹腔鏡下前立腺全摘除術」にも欠点があります。癒着がある症例や出血が多いと従来の開放手術の方が安全です。
前立腺癌のコントロール(治癒の成績)に関しては、長い期間の成績が出ていませんので、確定的ではありませんが、大きな差はないと考えられています。

ロボット支援前立腺全摘除





精巧な鉗子操作による膀胱と尿道の吻合




2)本手術の危険性(根治的前立腺摘除術全般に共通する)

 術中には出血、感染症(手術創、術後の呼吸器感染等)、直腸を含む周辺臓器の損傷(人工肛門造設および開腹手術の可能性)また、術後には尿失禁、吻合部狭窄および吻合部不全、尿瘻や性機能不全があります。

 前立腺の手術に特定ということではなく、すべての手術に共通するまれにみられる重篤な合併症として深部静脈血栓症による肺梗塞や輸血による合併症も有りえます。

1. 手術中・手術直後

 ・予想以上の出血があった場合には、輸血が必要になることがあります

 ・周囲臓器損傷:3〜4%程度の頻度で直腸、尿管を損傷することがあります。通常手術中に修復できますが、直腸の損傷ではごくまれに一時的な人工肛門が必要になることがあります。全国的に見ても1%に直腸合併症が認められています。現在のところ徳島大学では認めません。

 ・感染症:通常手術後2〜3日は発熱します。発熱が持続する場合でも一般的には抗菌薬の投与で軽快します。

 ・腹腔鏡手術では、操作が難しい場合や、出血、他の臓器の損傷などのために開放手術に変更しなければならないことが5%程度にあります。

2. 手術後

 ・尿失禁:従来の開創あるいは腹腔鏡下根治的前立腺摘除術では、尿道カテーテル抜去直後には、90%以上の方が尿もれ(尿失禁)を経験します。しかしおよそ6割の方は術後3ヶ月以内に改善します。今回のロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺摘除術では、3か月で88.5%、6か月で92.3%の方で尿禁制が得られています。

 ・性機能障害:原則として両側の勃起神経は前立腺といっしょに切除しますが、がんの浸潤が限られ患者さんの希望がある場合、勃起神経の温存を目指すことも可能です。

 ・尿道狭窄:膀胱と尿道の吻合部が狭くなり排尿困難感が強くなることがあります。排尿困難が高度な場合には内視鏡的に広げることもあります。

 ・創ヘルニア:傷の下の筋膜がゆるんで、腸が皮膚のすぐ下に出てくる状態で、再手術が必要になることがあります。開放手術より腹腔鏡手術やロボット手術では起こりにくいと考えられます。

 ・下肢痛・しびれ:まれに一過性のしびれや痛みをきたすことがあります。

 ・術後再発:術後経過観察中に再発が認めらえた場合には、放射線療法やホルモン療法を追加します。

 最後に徳島大学でのロボット支援前立腺全摘除術の成績を示します。

文責 井﨑





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