徳島大学大学院医歯薬学研究部 泌尿器科学分野

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泌尿器科の病気、治療について

1. 疫学について

 腎細胞癌は大人が罹患する癌の2~3%を占めます。男性では7番目、女性では9番目に多い癌です。世界で毎年209,000例が罹患し、102,000例が死亡しています。ここ数年、腎癌に罹患する患者数は増加していますが、早期癌だけでなく進行癌も増加しており、死亡数も増えています。危険因子として喫煙、肥満、高血圧が報告されています。

 好発年齢は高齢者になるほど頻度が高くなります。

 腎細胞癌のうちの2~3%は家族性に発生します。で最も良く知られているのがvon-Hippel Lindau病で、淡明細胞型腎細胞癌、中心神経系の血管芽腫、褐色細胞腫などが発生します。

2. 分類について

 腎細胞癌は、WHOの組織学的分類では10型に分類されます。それぞれの組織型は、発生する母地や原因遺伝子が異なり、治療の有効性や予後も異なります。代表的な組織型として、最も頻度が高く腎細胞癌の約80%を占める淡明細胞型腎細胞癌、10〜15%を占める乳頭状腎細胞癌、約5%を占める嫌色素性腎細胞癌があります。

3. 症状

 症状は、原発巣(腎臓に発生した癌)による症状、他の臓器への転移巣による症状、癌による全身症状があります。

a.    原発巣による症状

 早期癌では特に症状はありません。癌が進行し、尿路に浸潤すると、尿に血液が混じり、血尿となります。ひどい場合には、凝血塊により尿路が閉塞し、側腹部痛をきたしたり、膀胱から尿を排泄できない状態(尿閉)になったりします。

 また、腫瘍が巨大になると、痛みが出てきたり、腹部腫瘤を体の表面から触ったりします。

b.    転移巣による症状

 腎細胞癌は肺、リンパ節、骨、肝、脳などに転移をきたします。肺転移では、咳、血痰、呼吸困難などの症状が出現します。骨転移の場合はしばしば腰痛、肩痛などの強い痛みが出現します。また、骨折をきたすこともあります。脳転移では意識低下や手足の麻痺などがおこることもあります。

c.     全身症状

 腎細胞癌により全身症状が出現することがあります。特に進行癌においては、発熱、全身倦怠感、体重減少、冷汗、貧血、高血圧、低血圧など、様々な全身症状が出現します。特に体重減少、発熱、血液検査で炎症反応が高値である場合には、急速に病状が進行する場合があります。

4. 診断

 エコーやCTにより、腎細胞癌を診断します。特に造影CTは腎細胞癌か良性の腎腫瘍かの鑑別に重要な検査です。腎機能の悪い人には、MRIで診断することもあります。腎細胞癌が疑われる場合には、他の臓器に転移をしていないか調べるために、胸部CT、骨シンチ、場合により脳CTも行います。



5. 治療

 腎細胞癌の治療は大きく分けて、手術と薬物療法があります。

1) 手術療法

 がんのある腎臓全体を周囲の脂肪を含めて摘除する根治的腎摘除術を行います。これは、転移があっても、全身状態が許せば、腎摘除術を行った方が、生命予後が良いと言われていますので、腎摘除術を施行しています。

 手術の方法は、以前はすべて開腹手術でしたが、当科でも早期から腹腔鏡手術を導入し、できるだけ小さな傷で、体への侵襲を減らしています。腫瘍が巨大な場合や、腎静脈あるいは下大静脈内に腫瘍血栓を伴う場合、リンパ節郭清を伴う場合は、開腹手術を行っていますが、それ以外の多くの場合はこの腹腔鏡手術で腎摘除術を行っています。

 しかし、1個の腎臓を摘除した場合、全体としての腎機能が低下するため、将来的にさらに腎機能の低下や心血管系の病気が出現してくる可能性が指摘されています。そのため、腫瘍径が小さい場合(4cm以下)には、できるだけ腎部分切除術を行い、腎臓の正常部分をできるだけ残し、腎機能の低下や心血管系の病気がおこりにくいように配慮しています。

 この腎部分切除術も可能であれば、腹腔鏡下で行っていますが、腎摘除術に比べ手術の難易度が高いために、腹腔鏡下で難しいと判断した場合には、開腹術で腎部分切除術を行っています。

 また、腎細胞癌の転移巣についても、転移臓器、転移数、完全に摘除可能かどうか、全身状態などを考慮して、可能であれば手術的に摘除しています。

 その他には、全身状態が悪く手術が困難な場合には、経皮的ラジオ波焼灼術や、凍結療法などの治療選択も可能ですが、当院では行っていません。

2) 薬物療法

 保険診療で行われている腎細胞癌に対する薬物療法には、サイトカイン療法と分子標的治療があります。他の癌で投与されている抗癌剤は一般的に無効です。切除不能な腎細胞癌あるいは転移のある腎細胞癌が対象となります。

a) サイトカイン療法

 サイトカイン療法には、インターフェロンα(IFNα)と、インターロイキン2(IL2)があります。IFNαは皮下あるいは筋肉注射で、IL2は点滴 静注にて投与します。それぞれ単独で使用する場合と、併用で使用する場合がありますが、それぞれ有効率は10〜20%で、肺転移のみの場合には効果が期待 できますが、肺以外の転移巣にはあまり効果は期待できないとされています。この治療の特徴として、有効率は低いですが、長期にわたり病巣のコントロールや 消失が得られる場合があります。

b) 分子標的治療

 分子標的薬には、血管新生を阻害する血管内皮成長因子(VEGF)を阻害する薬と、mTORという蛋白を阻害するmTOR阻害剤があり、現在腎癌薬物療法の中心となっています

(1)  VEGF阻害剤

 このVEGF阻害剤が薬物治療として、最初に使用されることが多いです。VEGF阻害薬は、主に血管の新生を阻害することにより腫瘍増殖を抑制します。現在日本で使用できる薬剤として、ネクサバール®、スーテント®、インライタ®があり、すべて内服薬です。サイトカイン療法に比べて、腫瘍の縮小効果は強いです。特に、スーテント、インライタの腫瘍縮小効果が高いことがわかっています。

 主な特徴的な副作用として、手掌や足底に発赤、皮膚剥離、痛みを伴う手足症候群、下痢、高血圧があります。スーテントの場合にはこれに加えて、疲労、血小板減少の頻度が高く、まれに心機能が低下する場合もあります。インライタはこれに加えて、蛋白尿の頻度が高く、高血圧の頻度もネクサバールやスーテントと比べてさらに高いことが報告されています。

(2)  mTOR阻害剤

 mTORを阻害することで、蛋白合成、細胞増殖、血管新生などを抑制することにより腫瘍増殖を抑制します。mTOR阻害薬には、トーリセル®とアフィニトール®があります。トーリセルは点滴静注を1回/週行い、アフィニトールは内服薬です。これらの薬剤は通常は、VEGF阻害剤に効果がなくなった場合に使用しますが、予後が悪いと考えられる患者さんには、最初からトーリセルを投与する場合もあります。

 これらのmTOR阻害剤の副作用の主なものとして、口内炎、間質性肺炎、感染症、高脂血症、高血糖などがありますが、特に間質性肺炎に注意が必要です。間質性肺炎をおこすと発熱、空咳、呼吸困難などの症状が出現しますが、重篤になることがありますので、このような症状が出た場合には、すぐに病院に連絡する必要があります。

 徳島大学では、このような腎癌に対する薬物療法、以前より特に分子標的治療の経験があり、他病院からの紹介患者も治療しています。

6. 予後

 腎細胞癌が腎臓に限局し、他の臓器に転移がない場合(T1-2N0M0)、手術療法により、5年の生存率は70-90%です。根治的手術施行後に、約30%に再発が見られ、また初診時に約30%がすでに転移を有しています。転移を有する腎細胞癌に対して、従来はインターフェロンなどの免疫療法が行われてきましたが、平均生存期間は、アメリカで約300日、日本で約640日と報告されています。現在治療の主体が分子標的治療薬に移行していますが、分子標的薬が使用できるようになってからの腎癌の予後に関するデータはまだ十分でありません。分子標的治療薬であるスニチニブを投与した臨床試験のデータでは、海外で約2年、日本で30か月以上の長い全生存期間が得られています。







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